「花と昆虫、不思議なだましあい発見記」
「花と昆虫、不思議なだましあい発見記」
田中肇 著講談社SOPHIA BOOKS
2001年5月15日刊
先日の勉強会で佐々木先生の胸にとまっていたミツバチブローチの作者である田中肇さんは、貴金属細工職人をしながら、花と昆虫の生態を観察し、花の受粉システムを明らかにする花生態学を研究。日本花粉学会の学術賞まで受賞されている市井の研究家です。
その田中氏の研究成果を専門用語を使わずに、とてもわかりやすく紹介している本です。
花と昆虫の不思議に満ちた関係にただ、ただ、驚かされるばかり。人間の世界は地球のごく一部にすぎないのだと気づかせてくれます。
花に脳があるわけではないのに、どうやってこんなふうに工夫を重ねて虫を呼ぶことができるのかとても不思議です。
例えば、ミツバチをはじめとする花蜂は、子どもを育てるために大量の蜜や花粉を必要としているため、花にきたとき効率第一で無駄に飛ばない。これがヤマツツジにとっては迷惑。花粉が運ばれても隣の花のめしべにつくだけだから、近親交配になってしまう。だから、花から蜜を吸うと、高く飛んで遠くの株に止まってくれるアゲハチョウ類のために、蝶が好む赤色になり、口をさしこむ入り口にたくさんの赤い斑点を散らし、管を長くして徹底的に蝶を優遇するというわけ。蝶は赤を識別できる、ならば、ミツバチは?
花の色と訪れる昆虫とのあいだにはゆるい結びつきがあるそうです。色と昆虫の関係も、なるほど・・・そういうことだったのねと驚きです。
無言のコミュニケーションが成りたっているようです。
例えば・・・
白い花は「蜜や花粉がすぐに食べられるぞ」というメッセージが込められいる場合が多いとあります。ノイバラ、ホウノキ、ヤツデ、セリなど、口が短い昆虫たちが訪れる。
スズラン、ドウダンツツジなどのように垂れ下がって下向きに咲く白い花は、止まるのが上手な花蜂のため。
紫色の花の多くは、筒型だったり、スミレやフジのように複雑な形をしたものが多く、この花から蜜をいただくにはちょっとした力と知恵が必要。それを得意とするのが花蜂類。
緑色の花は小いものが多く、集合して咲くことが多い。ヤツデやセリ、ヤブガラシなど。なんと日本みつばちが好んでいくとあります。
と、花の色と昆虫の関係の章だけでも、驚きの発見記です。
この本は、すでに廃刊になっているようで、古本でしか入手できないようです。