児童書 小さなハチかい
小さなハチかい (1978年) (偕成社文庫)
岩崎京子(作),荻太郎(画).1971年.福音館書店.278 pp.
鳥をテーマにした作品などで知られる岩崎京子の児童文学.
主人公の小学6年生、孝が,鹿児島から北海道まで,春から秋にかけての移動養蜂(その頃はまだ貨車での移動)を通じて,たくましく成長する様子がよく描かれています.北海道では十勝岳の大噴火が出てくるので,時代設定は1962年(昭和37年)です.
当時の養蜂のスタイルや養蜂家の知識,蜜源(挿絵あり)など,リアリティがあって,子供から大人まで充分に楽しめます.物語が終わる頃,養蜂家になる夢をしっかりもった孝の台詞に「ハチかいはみつをとりにくばっかりじゃだめずら.そのみつの出る花を育てなくっ ちゃ.おら,来年も,そん次もまいてやらあ.日本じゅう花であふれるまで,おらあ,やめねえ」というのがあります(今でも通用しているところがよいのか悪 いのか).
孝がハチかいになる決心をして嬉しいお父さんですが,「孝が学校を出てハチかいになるころ,はたして養蜂の世界が今よりよくなっているとは思えないのでしたが,孝にはいわないでおきました」と,ちゃんと将来を見据えてます.このあたりもリアリティが感じられます.
方言からもわかるように,主人公は静岡の養蜂家です.