エッセイ:「ラテン詩人と蜜蜂について」 by澁澤龍彦 「ドラコニア綺譚集」(青土社)より
澁澤龍彦が雑誌「ユリイカ」に昭和55年5月から56年6月まで連載したエッセイの中の一編。タイトルのラテン詩人は紀元431年生まれのガリアのシドニウス・アポリナリスのこと(たまたま結婚した義理のお父さんがあっという間にローマ皇帝まで大出世・・)。このシドニウスの残した文章と、1653年ベルギーはトゥルネーでのフランク族の王(シルデリック王)の墓の考古学的大発見の際に発掘された、黄金の300個以上の蜜蜂についてが関連付けられたエッセイとなっています。ご存じのように澁澤は考古学者ではなく、エッセイという軽い媒体でもあることから、この黄金の蜜蜂に関して決定的な解釈をここで出しているわけではありませんが、短文ながら該博な文献知識を駆使して過去の解釈を巡り、なぜナポレオンのマントにも蜜蜂が登場しているのか、ちょっとしたヒントも見せてくれています。ちなみに発掘された300個以上の蜜蜂たちは、ルイ14世の手に渡るなどの紆余曲折を経るものの、今となってはフランス国立図書館のメダイユ部に2個残るのみとのこと。現代フランスのCHAUMETも蜜蜂をモチーフとして取り上げるのは、本来これほど深い根があってのことなのかと茫然とする思いです(笑)。