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ミツバチのささやき El Espiritu de la Colmena

2010.01.26 by junbee

ビクトル・エリセ DVD-BOX – 挑戦/ミツバチのささやき/エル・スール

ビクトル・エリセ監督作品(1973年,スペイン映画)

10年に1本しか撮らないエリセ監督の長編第1作で,国際的に高い評価を受けた作品です.主人公アナを演じたアナ・トレントが見る人を惹きつけます(ちなみに主人公一家の役名は4人とも役者名).

時代背景は1940年頃.冒頭は父親フェルナンド(これがメーテルリンクをモチーフとしています)がミツバチの巣箱を開けるシーン(メーテルリンクの「蜜蜂の生活」の第1章は『巣箱の前に立って~勤勉な蜜蜂たちの、香り高い精神や神秘にふれるために,私たちはその巣をこじ開けねばならなかった』).燻煙器のふいごの音と役者があまりミツバチに慣れていないのがわかるほどの面布越しの荒い息づかいが音声として印象的に使われています.書斎にはガラスの観察巣箱が置かれ,フェルナンドは,メーテルリンクの「蜜蜂の生活」を書き綴っていて,いくつかの断片が象徴的に使われています(原作ではないけれど,先に読んでおけばよかったと思うかも).外に通じる通路を通るミツバチのシルエットが美しく,ミツバチ好きならこれだけでかなり満足.

女の子が通るさまざまな段階(通過儀礼)を,ミツバチの働き蜂の分業に投影しながら,プロットを壊さないようにていねいに,象徴的に見せていくエリセの構成は本当に見事です(もちろんプロットも).10年後のエル・スール(1983)が少々重すぎ,さらに10年後のマルメロの陽光(1993)がかなり静かすぎ,私の中ではエリセといえばやはり「ミツバチのささやき」になっています(3作の共通点は,照明のうまさと,映像の美しさです).

見終わっても,アナがささやく「エスピリト」が,しばらく頭にこびりついて離れなくなります.

DVD-BOX版には特典ディスク「精霊の足跡」という公開25年後に役者が撮影地に集まったドキュメンタリー付き.

参考(みつばち図書館:「蜜蜂の生活」)

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