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絵本:「みつばちじいさんの旅」 by フランク・ストックトン 絵 モーリス・センダック

2010.03.09 by Lazy Bee

みつばちじいさんの旅 (子どもの文学・緑の原っぱシリーズ)

そもそもは絵本の挿絵の大御所、モーリス・センダックなら蜜蜂を子供向けにどう絵に描くのか?足をちゃんと6本描いているのか?という疑問がこの本を手に取らせました。

原題は「THE BEE-MAN OF ORN」(「オーンの蜂男」という感じでしょうか) 

オーンというところにいつも蜜蜂と暮らしているみつばちじいさんがおり、自宅の小屋の中、着ているコートのポケットの中までが蜜蜂の巣でいっぱいになっていて、蜜蜂はよい友達で、おなかがすいたらポケットに手を入れればはちみつがお弁当になるというファンタジックな生活。

ある日、修行中の若い魔法使いが、なぜみつばちじいさんがこんな個性的な人になったのか興味を持って調べると、「なにかの生まれ変わり」でこうなったことまでは突き止められました。しかし、そこから先が、いかんせん修行中の経験不足でそれ以上はわからず、おじいさんに直接聞いてみるのですがおじいさんもいきなり知らない人からそんなことを言われてもわかるはずもなく。

しかし、元が何だったのかがわかれば、元の姿に戻してあげられると言われ、おじいさんはその気になり、元の自分の姿がなんだったか、を蜜蜂の巣と一緒に探す旅にでます。

「このはちたちは、自分のしなけりゃならないことが、ちゃんとわかっているんだ。だが、このわしはどうなんだ!なにをしたらいいのか、さっぱり、わからない。それでも、わしはやるつもりだ。たとえどんなことでも!そうすりゃ、もとの自分がわかって、もう一ど、それにもどしてもらえるんだからな。」

ストーリーとして、生まれ変わりの元のものに戻らなければならないことの理由の描き込みが若干不足な気もするのですが、とりあえずは自分探しに迷う現代の人々に聞かせたい堂々たるマニフェストです(笑)。

作者のフランク・ストックトンは1834年アメリカ、フィラデルフィア生まれ、アメリカ児童文学では「若草物語」のオルコット、「小公女」のバーネットと同世代、1902年没・・ということで、一見新しいようで、19世紀の匂いが微妙な感覚や文章の間に漂っています。一番有名なのは結末を明かさないで読者の想像に任せる’リドル・ストーリー(なぞなぞ話)’(日本でいうと芥川龍之介の「藪の中」と同様の形式)の「女か、虎か」で、これによって名を残しています。

結論の出ないリドル・ストーリーしかり、そもそも自分が何かの「生まれ変わり」であることを超自然な存在によって知らされ、深い自己に目覚めさせられ、そのルーツを探る道程を描く、という発想が東洋的で、同時代のメジャーな、翳りの少ないアメリカ児童文学とは少し流れが違うところから発しているように思います。

みつばちじいさんが元々何の生まれ変わりだったのか・・、結末は、こういうオチにするか?!!という部分もなきにしもあらずで(笑)、イギリスのアリスのようなナンセンスストーリーのテイストも見える、単に子供に読ませて終わりにするには複雑な読後感をもたらしてくれます。

センダックが蜜蜂をどう描くか、この絵本の中では蜜蜂の群れは何度も描かれますが、蜜蜂そのものがストーリーの中心ではないため、フォーカスして描いていないので、足そのものを描いていないです・・・さすが大御所、不必要なものはそもそも描かない(笑)。

みつばちじいさんの旅

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